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調査研究ノート№13(博物館だより№39より)

地域素材の学習材化の周辺(4)トイレットパーパー


1.はじめに

 紙、ことに、トイレットペーパーは私たちの生活にとってなくてはならないものです。製紙産業の盛んな富士市にとっては、生産・消費両面において、そのかかわりは多大といえるでしょう。

2.トイレットパーパーのはじまり

 トイレの後始末に、紙を使用するようになったのは、紙が貴重品であったことから、そう古いことではありません。文献的には、中国で6世紀、日本の一部上流階級では12世紀といわれます。国内で一般的に使用されるのは、浅草紙の需要がひろがる江戸時代になってからです。それまでは、草葉や木片などが主流であったことが、トイレ考古学の研究で明らかになってきています。欧米では、19世紀に加工機の改良が進み、ちり紙状からロール状に移行し下水道の発達とともに普及していきました。国内で今日のようなトイレットパーパーが生産されるようになったのは、大正時代からだといわれています。その後、昭和30年代のJIS制定により、幅や芯径が現状になりました。

3.トイレットパーパーの種類

 現在、国内では、古くからのちり紙とトイレットロールに大別されます。原料的には、バージンパルプ・古紙・両者のブレンド。形状的には、シングル・ダブル。最近では、消費者の嗜好・公共向けの用途に合わせて、紙を染めたり、模様や香水をつけたり、ホルダーの改良によって芯なしや長さを太巻きにしたりするものも登場しています。
様々な種類のトイレットペーパー
▲様々な種類のトイレットペーパー

4.学習材化の視点

  1. 製紙工業の学習
    ……平成11年に市内で生産された紙・板紙の合計は、約400万トン(全国の約13%)、トイレットパーパーについては3個に1個が、富士市で作られたことになります。また、市内でトイレットパーパーを生産している工場は、37になります(平成12年)。このような統計資料を具体的に示すことで、紙の町の一端が浮かび上がることでしょう。
  2. 環境学習上質古紙約1kgからトイレットペーパーが5個
    ……富士市内のほとんんどの小・中学校では、給食用牛乳パックの回収を市内の先進的なリサイクル製紙工場と協力して、行っています。平成12年度には、約254万枚の牛乳パックが回収されました。この製紙工場では、200mlの牛乳パック5,000枚から約250個のトイレットペーパーを再生産しています。この数値にもとづくと、約12万7千個の製品に生まれかわったことになります。自分のクラス・学校の回収量を換算してみてはいかがでしょうか。また、各地域や学校などで行われている古紙回収に着目するのも意義があります。上質古紙約1kgからトイレットペーパーが5個リサイクルされます。
  3. 文化誌的・社会的な学習
    ……日本トイレ協会の西岡秀雄会長の試算によれば、世界総人口の2/3の人たちは水・砂・木片・樹皮・海藻などをトイレットペーパーの代用的なものとして使用しているそうです。この背景には、気候・食文化・生活習慣の違いがあります。また、昨今では、富士山のトイレの汚れや防災トイレなどの問題がクローズアップされています。このような点に着目してみてはいかがでしょうか。
※本館では、紙ing博物館展の資料パネルの貸し出しを行っています。

(指導主事:内田 昌宏)

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