皆さんは、富士山の写真を撮って誰かに見せたことはありますか?富士山を前にすると、その美しい風景に思わずレンズを向けたくなる衝動は、多くの人が経験したことがあるのではないでしょうか。今ではスマートフォン等でいつどこでも高品質な写真を撮影でき、SNSなどを通じて簡単に公開することもできます。
しかし、ひと昔前までは、写真を撮影し、さらに公開することは決して容易なことではなく、それが100年近く前の昭和初期ともなれば限られた人にしか機会のないことでした。
そのような時代、浮世絵作品の富士山に魅せられた清水緑(しみずみどり)は、東京日本橋で和紙卸商を営むかたわら、多額の費用・人手・時間(日数)を要しながらも、趣味で富士山写真を撮り続けました。さらに、写真集の発行や個展の開催のほか、鉄道省国際観光局による日本旅行の宣伝写真としても採用されたことなどから、彼の相当な熱意と実力がうかがい知れます。
本展示会では、令和2年、清水家に残された作品『冨嶽真景』の原本写真約80点の寄贈を受けたことから、これら作品の一部を前後期に分けて展示し、その時代を切り取った美しい富士山の風景をご紹介します。
また、今年は富士山世界遺産登録10周年という記念の年でもあり、改めて富士山の素晴らしさを知る機会となれば幸いです。
( 2023/05/06 更新 )